舞台『TRUMP』総括的な。


『TRUMP』通いの日々,終わりました〜
(と感想を書き連ねてる間に,大千秋楽遠征を決意して行ってきました。はあ,よかった。一番よかった。感無量です〜)



はあ,たのしかった……!
いや,たのしいだけの舞台ではないんですが,なんというか,とても充実した日々でした。




以下,長めの感想の上,かなり漠然としたものなので,お気をつけください。
途中,関連作である『LILIUM』『SPECTER』のネタバレもちらほらあります。



『TRUMP』2015verで書いた記事,他にも以下があります。


truth ver.初日のざっくり感想はこちらに
  『TRUMP』2015ver. truth ver.初日の感想

これまでの公演との相違点と,その感想などはこちらに。
  『TRUMP』2015ver. これまでの公演との相違点と,その感想など。

reverse感想はこちらに
  『TRUMP』2015ver. reverse感想

『TRUMP』関連作品など,もろもろ紹介はこちらに(ネタバレなし)
  『TRUMP』関連作品など,もろもろ





最後は,truthとreverseをマチソワで観たのですが,これもよかった。
1日で,その輪廻を体験できるというのが,面白い体験でした。
「truthのウルの願いが,reverseという形になる」というのが,連続してみることで鮮明になった気がしました。





音楽もよかったし,衣装もよかったなあ。
完成度が高くて,夢をみているような感じで,とても集中して観られました。
(ただ,これは,たぶんDステ版DVDとかを散々観た後でだからって気もします。
物語の軸がもう頭に入ってるし,どう遊びが入るかもなんとなく把握しているので,その上で集中して観れたなと。
初見の人は戸惑う人もいると思います。そもそも,叙述トリックのある構成だから「どういうこと?」と思ってもらう意図もある舞台ですし)



今回は,『LILIUM』,『SPECTER』を踏まえての公演だったので,物語の厚みが増していて,
それを踏まえてると余計に思うところがあるし,観ていない人はあとからそのDVDを観れば,「ああ!」ってところがあって,シリーズ物のよさを活かされてたなと思いました。


出演されてる役者さんも,最初は,以前の舞台の印象を引っ張ってしまって,戸惑ってしまいましたが,みんなとてもよかった!!
「みんな」とまとめると乱暴だけど,本当に。
このカンパニーが好きです。とてもよかった。






改めて,なんでこの物語を、こんなに好きなのか,もはやわからないレベルになっているのですが,
たぶん,私は「もがく人」の話が好きなんだなあ。
それが報われなくても。


『TRUMP』は,結局,誰一人願いに手が届かない話。客観的には。
クラウスは,最後にソフィを手に入れるけど,本当に一緒にいて欲しかったのはアレンなわけで。(そして,この辺りがクラウスの悲しさであり,ソフィの悲惨さだなと思ってしまう)


しかし,誰も願いを叶えられない物語でありつつ,
それ以上に,願いを叶えようともがく物語でもある気がします。



個人的に,そういう人の物語がもともと好きなんだなーと思いました。
一生懸命もがいて,諦めたり,揺れたり,悩んだり,歪んだり。
最終的にたどり着くのがどこであっても,もがこうとする人が好き。



そう考えると,ソフィが本当にもがくのは,
『TRUMP』の後なんだろうな。などとも。ソフィ……( ;_; )










生で観れて,とくにクラウスの表情がとてもよくて,
森のシーンのラスト(一幕ラスト)で,戸惑いながら手を伸ばし,切望するような目をした後,諦めたように微笑み……という部分とか,
アレンを失うシーンも,ソフィを噛んでしまうシーンも,とても切実な気持ちが伝わってきで,かなりクラウスに肩入れして観てしまいました。
ソフィを噛んだ後のクラウスを観て,「よかったねえ」とさえ思ってしまった。


T/Rとも,クラウスがとてもよかったけど, Rでは,先生らしい理知的な姿から一転して,狂っていくクラウスが怖かったし,Tはそもそも怖いというか,つねに狂気が裏側にありそうでした。(このあたり,ちょっと記憶が混ざりつつあるので,T/Rの印象ごちゃ混ぜかもしれません^^;)



クラウスは,最初から「永遠の命をもってしまっている」という人物なので,それこそ神にも等しいような立ち位置だなとも観ていたのですが,
今回は,「ああ,本当に友達がほしかったんだな」と切々と思いました。
永遠の命をもったことで,あがめられたり,恐れられたりして,利用されたりもしたのかな……。
ただの孤独ではなく,「たとえ,そばに人がいても,自分の気持ちをわかる人など誰もいない。いるはずがない」という感じだったのかなあと。
そこに,アレンが現れて,永遠の命を寂しいと言ってくれた。わがままになっていいと言ってくれた。
それは無意識であっても,クラウスにとっては救いだったのだろうなあ。





ソフィとウルも,エピソードが増えたことで,ぐっと厚みを増したし,大人の出演者が多い分10代の二人の演技が,いい意味で目をひいた気がします。


この2人の関係は,『LILIUM』を踏まえて考えると,本当に切ない。
『TRUMP』後の世界にウルはいないのですが,いないはずのウルがソフィの中で生きているのが,業のようで。


『TRUMP』で描かれる二人は,
ウルがソフィに憧れる気持ちはよくわかるし,今回もT/Rともに,痛いくらいいろんな感情が伝わってきました。
しかし,ソフィにとってのウルは,いろんな解釈の余地があるなあとも思います。演ずる人によってもかなり違うのかも。


しかしそれが,『LILIUM』で,ソフィの中に、あんなにウルが残ってるとわかって,うわああああ。
しかも,最初は薬の名前だけだったのに,その後の話でどんどん肉付けされてて……。


今回追加になったウルの言葉(仲間を作らなくちゃ,女の子をたくさんだ,的なセリフ)も,ソフィはそれを真に受けているというより,無意識にトレースしてしまったのでないかと思えました。そうなるとなおさら狂ってるわけですが。








そういう,続編のエピソードを知ってるからというのが大きいですが,
今回の「君は僕であり,僕は君なんだ」という言葉は,呪いのように聞こえて仕方がありませんでした。
呪いのようであり,反面,それが永遠を生きる糧となってるようであり……。





クラウスに対するアレンの言葉も,呪いのようであり,希望のようであり。
『LILIUM』で,シルベチカも「私を忘れないで」と言いますが,あれも呪いのような希望のようなだなと思っていました
去る方からすると,その場の精一杯の言葉であるのだろうけれど,残される者には,ずっと抜けない棘のように光る。









そういえば,今回,冒頭に追加された老盗のセリフ「本当に狂ってるやつは,狂ったことに気づかない」というものが,印象的だったのですが,
物語の中では,誰を指しているのかは,とくに語られなくて,それがずっと気になっていました。



クラウスのことようであり,
永遠の命を得てしまったソフィのことのようであり,
繭期の少年たちのこととも言えなくもない。



『SPECTER』のコピーに「亡霊は誰だ?」というものがありましたが,
今回の『TRUMP』は,「狂ったのは誰だ?」という気がしました。









ソフィとウル,クラウスとアレンのことばかり書いてしまいましたが,
その脇を固めるラファエロとアンジェリコ,萬里とピエトロも,とてもよかった。ここに深みがあるのが,またいい。


ラファエロとアンジェリコは,アンジェリコがあんなにはっきりと愛憎的なセリフをいうとは思いませんでした。
これまでも,愛憎混ざってるんだろうなとは感じていましたが,まさかの明言。早くこの二人の話が知りたいです。




萬里とソフィも……
萬里が,ソフィのことをどこまで知っていて,どんな気持ちだったのか,これはもっと聞きたかったなあ。
(でも,それを語り出すと,『SPECTER』ありきの話になってしまう(今作だけを見ると,冗長なエピソードになってしまう)可能性があるから,なかったんだろうなあ。わかってるんだけど,萬里の心情はどこかで語ってほしい)



ピエトロも、ヴァンパイアハンターの責務を感じる箇所が増えたことで、ヴァンパイアハンターとヴァンプの関係が深まり、また、人間(ピエトロ)とヴァンプ(アレン)の友情も感じられて、「この物語にあえて人間がいる」というのがより印象的でした。




そして,ティーチャーズとダリ卿,アンサンブル。ここも手堅かった。
末満さんの作品は(全部観たわけではないのですが),脇役にまで血が通っているのが好きです。
脇役も,そこに生きてるし,ときに重要な役割を担う。
視点を変えれば,誰しもが主役になるような重みがあるのが好きです。
(そして,派生作品の構想がたくさん生まれてくるのも嬉しい。上演待ってます……)







もともと,今回の公演は,1年以上前に告知があって(確か,2014年9月),
それからずっとたのしみにしていて,
期待値が高すぎて,実際観てみたら「あれ?」となるかもと心配していましたが,全く杞憂でした。
とてもよかった……!!!!!